「遺言」を書く前に知って欲しいこと(4) 国際相続

金井健 2011年6月23日 17:35

 時代の流れでしょうか。外国籍を持つ方からの国籍取得のご相談や,逆に,外国籍を持つ人の雇い主の方からの相談,外国籍を持つ人との離婚の相談といった案件が少しずつですが増えてきました。

 

 相続の相談でも,今後は,“海外出身なため日本語は書けないが日本で遺言を残したい”,“父親が亡くなりました。父と母は10年前に離婚しており,その後父は外国人の女性と再婚。その女性との間にも子供が1人いますが,相続分の割合はどうなりますか?”といった国を跨いだ相続(国際相続)の相談が増えてくるのではないでしょうか。

 ① 日本在住のアメリカ国籍を有する人が日本において英語で書いた遺言は有効?

 遺言の方式については,遺言の方式の準拠法に関する法律が適用されます。同法2条によれば,遺言を作成した当時の国籍を有した国の法律でも,住所を有した地の法律でもよいとされています。

 なので,日本の法律あるいは州法いずれかの法律によって定められた法律に従った遺言であれば,その遺言は有効であるということになります。

 そこで,日本の法律すなわち民法ではどうでしょうか? 第1回で説明したように,自筆証書遺言は,遺言者が,①その全文,②日付および③氏名を自署し,押印することが必要です。他方,使用言語についての定めはありません。外国語で遺言することも可能であるとする裁判例もあります。

 したがって,英語で書いた遺言も遺言書の方式としては有効と考えられます(もっとも,内容の有効性の問題は残ります)。 しかしながら,英語と日本語のニュアンスの違いから後に争いの種になることも多いと考えられます。 争いを避けるには,この場合にも公正証書遺言が有効です。公正証書遺言は日本語で作成しなければならない一方で,遺言者が日本語を理解できない場合は,通訳を立ち会わせて遺言を作成することができます。

 ② 国際相続はどこの法律に従う?

 法の適用における通則法36条によれば,被相続人の本国法に従うこととされています。例えば,上の事例で,亡くなったお父さんが日本人,亡くなったときの奥さんが外国籍という場合であっても,日本の法律が適用されます。 上の事例では,日本の法律に従えば,外国人の配偶者が1/2,その子供がそれぞれ1/4,1/4ということになります。