フィリピン視察紀行(2)フィリピンの裁判所・司法制度

金井健 2012年5月 6日 16:46

 私たちは,フィリピン視察の最終日に,Supreme Court of Philippin(フィリピンの最高裁判所)に訪問することができました。私自身,日本の最高裁判所の中に入ったこともないのに,フィリピンの最高裁判所に訪問することができるとは!!まさか夢にも思いませんでした。

 

 我々が訪問した週は,ちょうどホーリーウィークといってフィリピンの祝祭日の週。ですので,裁判も行われておらず,休み前の片付づけで裁判所内もバタバタしていましたが,最高裁判所の大法廷・小法廷を見学することができました。

 写真(上)が,大法廷の様子です。裁判官の数は,長官を含めて15名。この点は日本と同じです。違うところといえば,書記官席の横にランプが置いてあるところでしょうか。これは例えば,弁護士の弁論が予定時間を超過すると,赤ランプが点灯するような仕組みになっており,終了を促すもののようです(日本でもあると便利かもしれませんね(^_^))。 

 また,傍聴席が二階建てになっており,裁判官を見下ろせたのも新鮮でした。

  

 フィリピンの裁判所は,最高裁判所を頂点として,下部の裁判所があります。この点も日本と似ていると思います。 

ただ,日本とは少し異なるところもあるようです。それが,「裁判官の独立性」です。現在,アロヨ前大統領の退陣に伴って,最高裁判所長官の弾劾裁判(罷免や処罰を求める裁判)が行われているようです。何でも,アロヨ政権時代,汚職事件の追求を受けていたアロヨ前大統領に有利な司法判断が多く出されていたとか!!日本では考えられないことですが,このように司法と政治が密接な関係にあることは諸外国ではしばしばみられることです。

 

 また,フィリピンの特徴的な制度として,「バランガイ制度」と言われる制度があります。バランガイ(barangay)というのは,フィリピンでの最小の行政単位で,「市」より小さい「地区」と訳されることもありますが,バランガイ法廷と言われる司法機能も有しています。この法廷は,法人や政府が当事者となるような一定の事件を除き,バランガイ内の全ての民事事件と軽犯罪事件について管轄を与えられていて,そこで解決できなかった事件のみが市や町の裁判所で争われるようです(バランガイの段階では弁護士もつきません)。

バランガイは上記裁判組織には組み入れられていないので,裁判所の下部組織ではありません。フィリピン独自の紛争解決制度のようです。

 

 裁判所とともにフィリピンの司法の重要な担い手となっているのが,我々と同じ弁護士です。私たちは,IBP(フィリピンの弁護士会です)にも訪問することができました。写真(下)がその様子です。そこでは,議長のローン先生をはじめ,役員の方々と日・比弁護士会の相互協力にむけての前向きな話し合いがなされました。

 ちなみに,フィリピンでは,弁護士の半分は女性だそうです(日本では30%くらい)。先に訪れていたフィリピン大学ロースクールでも女性の方が優秀だと言われていました。日本に出稼ぎに来るフィリピン人女性に限らず,ウーマンパワーはフィリピン社会を支えているようですね。

 帰り際,フィリピン弁護士会のマークの入っているネクタイも頂くことができました。何でも,「これをしめていればフィリピンで逮捕されない」とか。

 次にフィリピンに行くときは,着ていこうと思いました(笑)。

 

 次回,第3回は,マリガヤハウスや日比間での家族法の問題について採り上げたいと思います。

 

 弁護士 金 井   健